怖い話「金魂地獄!!闇金世紀末!」
ある町では、いじめにより自殺した少女の幽霊、玉金(ぎょっこ)が出没していた。
玉金は、小さい頃からその名前によっていじめを受けてきた。毒親から与えられた名前は、金に執着する守銭奴のような親の思いつきであった。しかし、家族のお金は玉金には渡されず、代わりに彼女は家事や庭の手入れに酷使されていた。
玉金は反抗したり、家出したりしても助けてくれる親戚も友達もいなかった。彼女にはお金があるのに、それを自分自身のために使わせない毒親たちに対して、彼女は次第に世間や人間を憎むようになっていった。
中学に進学してからは、不良たちの標的となり、暴力やいじめに遭う日々が続いた。玉金は金持ちだからという理由で、彼女を突き放す生徒たちにも嫌われた。玉金が持っているお金は毒親から支給されるわずかな弁当代だけで、彼女自身にはお金がなかった。しかし、貧しい学校の人々や世間の人々は彼女の苦しみを理解してくれなかった。
ある日、玉金は怒りに任せて不良グループを襲撃し、首謀者を撲殺した。しかし、彼らは玉金に対する仇討ちをせずに警察に通報してしまった。
玉金の怒りはとどまることはなく、コンビニを襲撃して店員を殺し、現金を盗んだ。喜びに満ちた彼女は、天井にお金を投げつけて高笑いをした。
もはや彼女に罪の無い人を標的にしないという倫理は消えていた。
そもそも、周りの誰もソレを守っていなかったのだから…
しかし、警察に取り押さえられ、彼女の手にしたお金も没収されてしまった。玉金は絶望し、舌を噛み切って自殺した。
「やめてぇー!“もう”アタシのお金を毟り取らないでー!」
そんな悲痛な叫びは、事情を知らない警察官達は勿論のこと、警察官達の裏で胸を撫で下ろす毒親、不良グループ達には何も響かなかった。
せいぜい、負け犬の遠吠えくらいにしかうつらなかった。
舌を噛み切って、涙を流し、憤怒の顔で事切れた彼女の睨んだ瞳をもってしても良心の呵責が起こるはずもなく、ただ単に気持ち悪がっているばかりだった。
そして、貴重な日本人の店員を殺されたコンビニの店長は玉金の死体に怒鳴りつけ、玉金の死体を蹴り飛ばしていた。
流石に警察官達が止めに入って死体蹴りはやめたが、激昂は収まらない。宥めようとした外国人の店員に八つ当たりして怒鳴り散らす始末。
厄介なことに、この店長は外国人の店員がどれだけ頑張っても良い評価をしない、前時代的にも程があり過ぎる時代遅れ過ぎる価値観の持ち主であった。
その後、改装されたコンビニで奇妙な事件が相次いだ。夜になるとレジスターから現金が消え、最初は店員たちが疑われた。外国人の店員、ディバも疑われ、彼女は他の店員や店長からいじめられた。
ディバは故郷の農村で働く家族への仕送りのために、留学生として出稼ぎに来ていた。
自分達から必要以上に金を毟り取る現地のブローカーは勿論のこと、利権を貪る官僚だけでなく、不景気をタテに精神論一辺倒にブラック労働を強いる日本の庶民達にも絶望していた。
ある夜、ディバは店内で金属音を聞いた。驚いた彼女が振り返ると、天井からお金が降り注いでいた。そして、玉金の声が彼女の耳に聞こえた。
「これで人間の本質がわかったでしょう。一緒に人間に復讐しましょう」
ディバには断る理由がなかった。彼女は玉金と手を組み、この町の闇金の女帝となった。町は大災害に見舞われ、血で血を洗うような世紀末のような状態に陥った。
復興の見込みもなく、町は封鎖されてしまった。ディバは玉金の幽霊と共に町の支配者となり、民を奴隷のように召し使った。毒親や不良グループたちも彼女の支配下にあり、彼らは日常的に「コロシテ、コロシテ、コロシテ」とつぶやいていた。
ディバと玉金はほくそ笑みながら、この町を闇に包み込んでいったのである。